今回は、1138話ラストの神典(ハーレイ)の見開きについて。どう考えても物語の核心に迫る内容に、脳汁が止まらないので久しぶりに記事を書きます。
神典と壁画を見て、恐らく多くの人が「空島編」を連想したのではないでしょうか?
例えばここ。
「隷人は願い〝太陽の神〟は現れた」

ラストでルフィが願いに答えて暗雲を晴れさせたシーンですね。
そもそも空島編はボスが「神」であったり、「大蛇の“にかっ”」や「ドンドットット」の伏線を張っていたり、後に「月の壁画」が描かれたりと、物語の根幹に繋がるヒントが多く散りばめられていたエピソードです。
神典と壁画がそんな空島編を連想させる内容だったとなれば、いま一度空島編に着目すれば見開きの謎も紐解いていけるというのが僕の見解です。
その上で書きたいことが沢山あるのですが、長くなりすぎるので今回は「太陽」に絞って書いていきます。そうする理由は、神典が次のような「太陽を軸にした起承転結」になっているからです。
起→太陽に触れたことで始まる(第一世界)
承→太陽は戦火を広げ続ける(第二世界)
転→太陽が殺される(第二世界)
結→太陽が回帰して夜明けが来る(第三世界)
これが何を意味しているかが分かれば、見えづらい神典というストーリーの“大枠の流れ”が分かり、解像度がかなり高まるはずです。その先には、ONE PIECEという物語の行く末も見えてきます。
それでは始めます。
神典の真意

僕は、こう読みました。
「第一世界」
地に炎あり
→世界は戦争が絶えなかった
人は欲望に負け禁断の太陽に触れた
→人は陽樹イブの禁断の力を利用した
隷人は願い太陽の神は現れた
→奴隷達の願いからニカが現れた
地の神は怒り業炎の蛇と共に世界を死と闇で包んだ
→地殻変動によりレッドラインが生まれ陽樹イブの姿が包み隠された
彼らはもう会えないのだ
「第二世界」
虚無に息吹あり
→陽樹イブに再び力が芽生え始めた
森の神は魔を遣わせた
→悪魔の実が生まれた
太陽は戦火を広げるばかりだ
→陽樹イブのいつも戦争の火種となる
半月の人は夢を見た
→Dの一族or光月家は夢を見た
月の人は夢を見た
→光月家orシャンディアは夢を見た
人は太陽を殺し神となり
→天竜人は陽樹イブを消し去り聖地を築き神となった
海の神は荒ぶった
→海面上昇等によりグランドラインが出来た
彼らはもう会えないのだ
「第三世界」
混沌に空白あり
→うねる時代に空白の100年があり
不都合な残影は約束の日を思い出し片われ月の声を聞く
→Dの一族がラフテルで真の歴史を知る
太陽の神は踊り、笑い世界を終末へと導く
→ニカが世界政府を倒す
太陽は回帰し新しい朝が来る
→陽樹イブが再び本来の姿となる
彼らはきっと会えるだろう
さて、他に気になるところがあると思いますが、今回は太陽にピントを合わせて下さい。僕は「太陽=陽樹イブ」だと考えました。さらに、神典と壁画が表わしているのは、「陽樹イブを奪い合ってきた歴史」と考えます。
なぜそう考えたかというと、空島編のストーリーと神典のストーリーに多くの類似点が見られる中で、太陽を陽樹イブと仮定すれば、ヴァースとあまりにも綺麗にシンクロするからです。ヴァースがそうだったように、陽樹イブもストーリーで最も重要度の高い、話の核だと考えます。
ただ、そう言われても少ししか描かれていない陽樹イブの重要度にピンと来ない人もいると思うので、一旦そちらを説明します。
物語の核〝陽樹イブ〟

ー特徴ー
・世界に一本
・全長1万m以上
・聖地直下の魚人島に巨大な根がある
・根から光と空気を届けている
魚人島編で巨大な根が描かれながらもその上部は一切描かれていない陽樹イブ。天竜人達が占有するよう真上に聖地を築いていることから、隠したい何かがあると伺えます。
それは、恐らく次の2つです。
①思想
②恵み
①思想
クローバー博士の言葉によって、政府と相反する思想があったことは確定しています。

それがどのような思想か解くために、まずは天竜人と類似点の多い“神”エネルと、それに相反したガン・フォールのやり取りに着目します。
エネルの最終目的の一つは、“神”として人間ごと空島の自然を破壊し尽くすことでした。

その言動からは、この様な思想が読み取れます。
「誰かが“神”となり、意のままに世界を支配する思想」
これは、今まで描かれたきた天竜人の思想そのものではないでしょうか。いわば人、自然、この世の全ての頂点に“自分”がいると考える思想です。
そんな考えを聞いたガン・フォールは、こう言います。

つまりは「人は神には成りえない」とうことです。
このすぐ前に同じくガン・フォールが言っていますが、空島の“神”とはスカイピアの役職名に過ぎず、世界を意のままにする様な存在ではないのです。
神などいない、人は神になりえない、しかしスカイピアの人達には像にして憧れ、尊ぶものがありました。
それは大地(ヴァース)です。

エネルと天竜人の思想が類似するならば、スカイピアと巨大な王国も類似し、ヴァースのような「大いなる自然を尊ぶ思想」があったのではないか?という仮説から、現存する巨大な王国側の国々に着目します。

こちらの壁画左側は、第二世界でジョイボーイの時代を描いたものと思われますが、右側は巨大な王国と考えてまず間違いでしょう。
ここに描かれた種族の国で、現存する世界政府非加盟は3カ国あります。注目したいのが、その島には必ず“大樹”があるのです。(トンタッタはドレスローザの属国なので省く)
ⅰ.エルバフ

ⅱ.モコモ公国

(非加盟と明言はないが“幻の都”なのでほぼ確実)
ⅲ.ワノ国

世界政府から思想の上書きを受けることのない、この3カ国にある大樹は、陽樹イブを模したものと考えられないでしょうか。つまり、空白の100年の人々が陽樹イブになぞらえて、大樹のある地を選んで住み始めたか、植樹したのではないかということです。いずれにしてもこの共通点から巨大な王国には次のものがあったと考えました。
「陽樹イブを尊ぶ思想」
もう少し詳しく言えば、誰か一人の“人”を神として崇めるのではなく、世界最大の樹を心の拠り所に、自然の上にも下にも立たず共生する思想です。
ただし、ヴァースがそうであったように、ただの大樹を奪い合ったりはしないと思うので、もう一つ特別な理由があると考えます。
②恵み
ヴァースとは、作物、鉱物などの「多くの恵み」を与えてくれるものでした。

これを理由に、スカイピアの人達はヴァースを尊び、手放すことができず奪い合っていました。
同じ大いなる自然である陽樹イブも、多くの恵みがあると考えられます。その一つとして、その根から魚人島へ光と空気という恵みを届けていると語られていました。

ただ、それだけでなく枝葉のある上部からも「何らかの恵み」が得られても不思議ではありません。だから天竜人達はそれが占有できる場所に聖地を築いているのではないでしょうか。
ここで見てもらいたいのが壁画右側の左上。

竜がこの位置に描かれているのは、陽樹イブ上部に何か繋がりがあるからではないでしょうか。ただ守っているだけのようにも見えますが、ここも空島編になぞらえて考えます。
「空島編」
エネル(神)→ヴァースの恵み“黄金”を“強大な力”に利用
「神典」
天竜人の祖先?(神)→陽樹イブ上部の“何らかの恵み”を“強大な力”に利用
つまり、壁画の竜は陽樹イブ上部の恵みを力として利用した様子ではないかということです。どのような力が得られるかをハッキリさせるのは難しいですが、禁断の力がそれに当たり、イム様や五老星達の異様すぎる変身や再生能力の根源がそこにあるのかも知れません。いずれにしても上部の恵みは、使い方次第で人に人智を超えた強大な力を与えると考えます。
以上が「天竜人の隠したいものは、“思想”と“恵み”と考えた根拠です。これが正しければ、陽樹イブの物語においての重要度が非常に高まると思います。
それだけ重要なものだからこそ、そこに住んでいた種族であるルナーリア族のキングは、顔に植物紋様のタトゥーを入れているのではないでしょうか。

では、話を次へ進めます。
神典という物語の大枠の流れ
このまで書いたように、大枠の流れの核は陽樹イブです。
「第一世界」
①世界は資源や土地の奪い合いを繰り返していた
②陽樹イブの禁断の力を利用する者が現れた
③レッドラインによって陽樹イブは亡きものに
④数百数千年経ち上部の恵みは忘れられる
「第二世界」
⑤陽樹イブの力が再び芽吹きルナーリア族が棲む
⑥巨大な王国は陽樹イブを尊ぶ思想を持つ
⑦再び陽樹イブを奪い合う戦火が広がる
⑧天竜人は巨大な王国を滅ぼし、戦いの歴史とともに禁断の力の記憶を世界から消した
この流れで考えると壁画の構図とも辻褄が合います。

右側「第一世界」は、前述した天竜人の先祖(?)が陽樹イブから“力”を得て戦う構図。
左側「第二世界」は、ルナーリア族を含む巨大な王国が陽樹イブを背にして守るように戦う構図です。
では、この後「第三世界」で陽樹イブはどうなるのか?
陽樹イブの行く末
いきなり少し話は逸れますが、ヴァースは二段階の要因で空に飛びましたが覚えていますか?
第二段階のノックアップストリームは強烈なのですぐ思い出せると思いますが、実は第一段階で地震による地割れや地盤沈下が起きていたんです。

もともと亀裂が入って地盤が弱っていたところに、トドメのこれだった訳です。

で、彼らは会えなくなったと。

①地震による地割れ地盤沈下
②突き上げる海流で吹き飛ぶ
③彼らは会えなくなった
↓↓↓
第一世界|地の神は怒り
第二世界|海の神は荒ぶった
「彼らはもう会えないのだ」
「地」と「海」がヴァースを分断し、二人を会えなくしたように、
「レッドライン」と「グランドライン」が陽樹イブを分断し、“誰かを会えなくしたということです。綺麗に同じ。
ここも一緒です。

エネルは大地(ヴァース)を殺して神となろうとした
↓↓↓
第二世界|人は太陽(陽樹イブ)を殺し神となり
やっぱり神典の解読は空島編が鍵といって良いと思います。なので、第三世界で陽樹イブがどうなるかも空島編に着目します。
こちらは、上のシーンの前にエネルが集中砲火でヴァースを砕こうとしたシーンです。

しかし、エネルの強大な力を持ってしても大いなる自然には敵いません。

それを目の当たりにして、400年目にしてようやくスカイピアの人達とガン・フォールは重要なことに気付きます。

ヴァースは奪い合える様なものではなかった
つまり、自然は皆んなのものであって、奪い合ったり、誰かが独占したり、意のままに壊したりして良いものではないということ。これにお互いが気付けたから、その恵みをお互いに享受して生きていくという結末を迎えられたのです。

この話を踏まえれば、第三世界での陽樹イブの行く末も想像がつくと思います。
太陽は回帰し新しい朝が来る
神典はこういっているので、
①ラフテルで陽樹イブの真の存在理由を知る
②レッドラインとグランドラインの分断を無くし、物理的に陽樹イブを解放
③天竜人を倒し、人が神として君臨せず、陽樹イブを尊ぶ思想の復活
④その恵みを皆んなで享受
この様になることが予想できます。そして最後はきっとこんな未来が来るんじゃないでしょうか。

歪み合ってきた人達が、一つのキャンプファイヤーを囲んでいるように、復活した陽樹イブを囲んでバカ騒ぎする結末です。
それでは、記事冒頭で触れた最後の項目へいきます。
ONE PIECEという物語の行く末
はい、お疲れ様でした。
今からここまでの内容を全て根底からブチ壊します。

本当は、神典の太陽とは「マザーフレイム」のことです。
…大マジです。
ごめんない、ここまでの内容は全部ウソです。
…というのは冗談で、正確に言うと僕はこう考えています。
太陽の正体は、陽樹イブとマザーフレイム
つまり、神典は太陽にどちらを当てはめても意味が通じるよう仕掛けられた文章だということです。なぜそう考えたかというと、神典のラストの「新しい朝」が2つの太陽がなければ説明がつかないからです。
前述した陽樹イブだけのラストだと、陽樹イブが解放され思想が復活だけで、新しくはありません。ですが、そこにマザーフレイムもあれば、全く「新しい朝=新しい世界」が来ると考えています。
ここからが重要なので、もう少しだけお付き合いください。
〝新しい朝〟
まず、ベガパンクのモデルとなったアインシュタインの有名な言葉をご存知でしょうか?

「第四次世界大戦が起きるとしたら、兵器は石と棍棒でしょう。」
これは、「第三次世界大戦が起きるとしたら、兵器は何?」と聞かれた時の回答です。つまり、アインシュタインの真意は「第三次の行き過ぎた科学力による未知の兵器で、世界は一度崩壊し、第四次は原始的な武器で戦うことになる」ということです。
これを踏まえて、もう一度1138話の見開きをご覧ください。

第一世界では、何らかの資源を搾取し、圧倒的な科学力が勃興した様子が見てとれます。それが第二世界は“虚無”で始まるので、まさにアインシュタインの言葉通り、科学が行き過ぎて暴走し、世界は一度崩壊したということでまず間違いないでしょう。
そして、第二世界。壁画からは、原始的な武器で戦ったかのように感じ取れますが、ベガパンクの言葉から、巨大な王国ではもう一度科学が発展したことが分かります。

ただし、前述したように巨大な王国には「陽樹イブを尊ぶ思想」があります。ですので、僕はこう考えます。
第一世界→自然を搾取し、科学が支配した時代
第二世界→「自然と科学の共生」に試みた時代
しかし、失敗し世界はまた崩壊たと。自然と科学の共生とは、現実世界でも永遠のテーマです。尾田さんは、ジブリファンを公言してしていますが、ジブリ作品の多くも自然と科学(人)の共生をテーマにしています。観たことのある方は、そのイメージです。
科学が行き過ぎて自然を破壊することのないよう、逆に自然の猛威が起きたときには科学で上手く付き合う、そんな「科学」と「自然」のバランスが取れた世界。面白いのがこれもやはり、すでに空島編に描かれている点です。

過去編の「樹熱」のエピソードですね。人から森へ、森から人へうつり島を滅ぼす病気です。ちなみに、地の神と海の神の災いは前述しましたが、恐らくこれが森の神の災いです。神典で登場した神は、全て空島編にシンクロさせて描かれていたんです。
話を戻して、この樹熱をシャンディアの人々は「呪い」「祟り」として、神に生け贄を捧げる宗教的方法で退けようとしていました。

これが科学を一切無視し、自然の下に人がいて、完全に自然と科学のバランスが取れていない状態です。そこに植物学者のノーランドが現れ、科学の力で治療を施し、バランスをもたらしたというのが樹熱のエピソードでした。

「自然のカルガラ」と「科学のノーランド」二人が親友になったイメージで、ONE PIECEという物語の行く末は、自然と科学の共生に集約されていくのだと思います。ですから、第三世界はこうなるでしょう。
第一世界→自然を搾取し、科学が支配した時代
第二世界→自然と科学の共生に試みた時代
第三世界→自然と科学が共生する新時代
つまり、過去から学び陽樹イブ(自然)を尊びながら、マザーフレイム(科学)を利用し、2つの太陽と共生する全く新しい世界です。

それは、我々読者が現実ではもちろん、どの時代のどの作品からも見たことがない、尾田さんオリジナルの全く新しい夢のような世界でしょう。そう、まるで遊園地のような。

第一世界、一度目で失敗し、過ちを繰り返さないよう二度目で試みるも失敗、それでも三度目の正直で今度はきっとうまくいく。海王類の言葉の真意も自然と科学の共生にあるのではないでしょうか。

最後になりますが、尾田さんの描く新しい朝には、一つ忘れてはならないものが描かれると予想します。実は「新しい朝」は、一度サブタイトルに冠されているのをご存知でょうか?
ワノ国でカイドウを倒した後のエピソードです。

ここにその忘れてはならないものは描かれていました。
それがこちらです…

新しい世界は、きっと温泉で〝ひとつなぎ〟になるでしょう。
ご清覧ありがとうございました。
P.S.
温泉の意味が分からない人はコレ見てね。

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