今回は、未だ謎だらけの「黒ひげの最終目的」を前編後編に分けて解き明かしていこう。
前編は、「ギリシャ神話」からヒントを貰い紐解いていく。
ギリシャ神話には数多くの神が登場するが、神々の王は”三神”の中で移り変わっていくというのが大きな流れだ。
原初の王「ウーラノス」
↓
二番目の王「クロノス」
↓
三番目の王「ゼウス」
私は、この三神が以下のようにリンクしていると考えている。
原初の王「ウーラノス」=「イム」
↓
二番目の王「クロノス」=「黒ひげ」
↓
三番目の王「ゼウス」=「ルフィ」
それぞれの特徴に類似点が見られるからだ。その発見を基にギリシャ神話を見渡すと、黒ひげの最終目的に繋がってきそうな「重要な一文」が浮かび上がってきた。
それがこちら…
ー 世界は”カオス(虚空)”だった ー
これを詳しく説明する前に、まずは黒ひげと黒ひげ海賊団の言動から彼らの「性格や特徴」をまとめていこう。それが上の一文と繋がらなければこの考察は成立しないからだ。
尚、三人のモデルはギリシャ神話の神だけでなく他からも多様に取り入れていると考えられるので、その内の一つとして考えて欲しい。
黒ひげ海賊団の「性格や特徴」
周到な計画がある
ルフィの本能の赴くまま進む冒険に比べると、黒ひげは極力無駄な戦いは避け、用意周到にコトを進めているように見える。
「おれが成り上がる手段は、もう全て計画してある!!!」
この言葉通り、「最終目的」とその「道筋」は明確に描いているのだろう。
このシーンでもう一つ触れておきたいのが次の言葉だ。
「海賊王にはおれがなる!!!」
どうやら計画の中で海賊王にはなるつもりらしい。これは今回の謎を解き明かす一つのポイントとなりそうだ。
ただし、ルフィの”夢の果て”と同様に海賊王になることは「手段」であり、その先に最終目的があると考えていいだろう。
仲間と対等
「支配と自由」はONE PIECEの大きなテーマとなっているようだが、登場人物が「”支配者”となりたいのか?」これ見分ける上で非常に重要なポイントは「仲間と対等かそうでないか」だと考えている。
黒ひげはどちらなのだろうか?
一つの例として、ルフィに空島へ逃げられた後にバージャスが黒ひげに放った言葉を見て欲しい。
「何とかしろよ船長!!!」
この後の黒ひげの言葉に対してもバージェスは、「ったくよォ!!」と吐いているが、これらは上下関係や主従関係にある場合には出ない言葉遣いだと考えられる。他の船員も「船長」と呼ぶなど立場的には立ててはいるが、心は対等に見える。黒ひげも船員に上から命令したりする素振りはない。
つまり、黒ひげは「仲間と対等」であり、先に挙げた法則から「支配者になりたい訳ではない」と言える。例えば、最終目的が「世界の支配者になる」ならば、それに繋がる言動が普段から滲み出ているはずだが、その様な節は無く、むしろ”自由奔放”に海賊をやっている様にすら感じないだろうか。
“死を恐れない”最初の5人
「黒ひげ、バージェス、オーガー、ラフィット、ドクQ」の5人は、「運命」や「巡り合わせ」という言葉を頻繁に使っている。
その発言の節々からは、周到な計画を持っていながらも伸るか反るかは”天任せ”で行動していることが伺え、計画の途中で失敗や死が待っていても「それも運命」と受け入れられる度量の大きさを感じさせる。
それは言い換えると「死を全く恐れない強い精神」を持っている者達だと言える。
“死ぬ運命にあった”後の5人
「シリュウ、ピサロ、デボン、ショット、ウルフ」インペルダウンより連れ出されたこの5人は、元は”死刑”か”完全終身刑”が言い渡された囚人であり、監獄で一生を終える運命が確定していた者達だ。
ということは、黒ひげは最終目的の為に「死ぬ運命にあった者達を集めた」ということである。後述するがこれは非常に重要なポイントだと考えている。
ちなみに、何らかの病気を患っているドクQも寿命が限られているという可能性がなくは無い。
“ヤミヤミの実”でなければいけなかった
これは今回の最重要ポイントだ。
上の発言から読み取れるのは、そもそも黒ひげの計画は「ヤミヤミの実」が手に入らなければ発動することすらなかったかもしれないということだ。
つまり裏を返すとこうなる。
「最終目的はヤミヤミの実だからこそ実現可能」
一度全てをまとめよう。
・周到な計画がある
・海賊王になるつもり
・支配者になりたい訳ではない
・死を恐れない最初の5人
・死ぬ運命あった後の5人
・最終目的はヤミヤミの実だからこそ実現可能
以上のポイントは、「最終目的」と密接に繋がってくるはずだ。(答え合わせは後述する)
続いては、冒頭に挙げたギリシャ神話とのリンクが本当にあるのかを確かめていこう。
ギリシャ神話の神々との共通点
前述したようにギリシャ神話の神々の王は、以下のようにリンクしている。
原初の王「ウーラノス」=「イム」
↓
二番目の王「クロノス」=「黒ひげ」
↓
三番目の王「ゼウス」=「ルフィ」
一人ずつ見ていこう。
ウーラノス(天空神)とイム
ー ウーラノスとは、ギリシャ神話における「原初の王(一番初めの王)」であり、世界の創造主でもある。
一方、ONE PIECEにおける世界の創造主は天竜人だ。その最高権力は五老星とされているが、彼らがイムに対して跪いていた様子を見ると、「イム=世界の創造主の王」と考えても不自然ではないだろう。
ー また、ウーラノスは異形で生まれた自らの子を見た目だけで嫌い、”奈落”へ追いやる。ギリシャ神話の奈落とは地の底にあるとされており、その距離は“天と地の距離と同じだけ下方”にあるとされている。
それに対して、天竜人達は魚人を見た目だけで忌み嫌っている。イムはしらほしの写真を切り刻んでいたところを見ると何か特別な因縁があるのかも知れないが、嫌っていることは確かだろう。
魚人達は、上空1万mにある空島と同じ距離の海底1万m潜った魚人島に追いやられている。
(ここでは余談になるが、私はウーラノスとイムの繋がりから「古代兵器ウラヌス=イム」であるとも別の記事で考察している)
クロノス(農耕神)と黒ひげ
ー クロノスは、12人兄弟(ティタン神族)の末っ子で、父であるウーラノスを直接倒して覇権を奪った二番目の王だ。”農耕神”が神々の王の座に就くというのは、他の神話では見ない異質な例である。
兄姉を差し置いて農耕神が王に成ったことからクロノスは言わば「成り上がりの神」とも呼ばれている。
一方、ONE PIECEの世界でこれまで最も成り上がりを見せたのは黒ひげではないだろうか。
見た目のゴージャス感も去ることながら、短期間での懸賞金の跳ね上がり方はルフィ以上だ。その上「四皇」という肩書きまでも手にして、名実共に「成り上がりの海賊」と言える。
ー また、クロノス含む12神は、ティタン神族と呼ばれ、全員が「巨人族」である。
それに対して黒ひげ海賊団は、サンファン・ウルフ以外は巨人族でこそ無いが人間にしては「巨躯」の持ち主が揃っている。下のシーンの通常サイズの人間と比べると一目瞭然である。
黒ひげ以外は「10人の巨漢船長」と表現されているシーンもある。
この時点では黒ひげ含む11人の船長がいることが分かっているが、もしもティタン12神と数を合わせて船長が12人となればこの考察もより信憑性を帯びてくるかもしれない。
ゼウス(天空神)とルフィ
ー ギリシャ神話の主人公ゼウスは、クロノスの末っ子である。クロノスは、ウーラノスから言われた「お前も息子に殺される」という予言を恐れ、生まれた子供を全員飲み込んでしまうが、ゼウスだけは母の助けで逃れて神々の住む土地から離れた「クレタ島」で密かに育っている。
それに対して主人公ルフィは、イワンコフに”辺境の国”と表現されたゴア王国のある「ドーン島」で密かに育っている。
ー また、成長したゼウスはオリュンポス12神を率いてクロノス率いるティタン神族(12神)に戦いを挑み、全宇宙を揺るがす巨大な戦い(ティタノマキア)に勝利する。
その後、別の戦いにも勝利したゼウスは全宇宙を平定して世界の王となる。
一方、ONE PIECEの世界においても白ひげが予見した「世界中を巻き込む程の巨大な戦い」は必ず起きるだろう。
その戦いの中でルフィ率いる麦わらの一味と黒ひげ率いる黒ひげ海賊団が激突すれば、それは正にゼウスとクロノスが激突したティタノマキアとリンクしてくるのだ。(現在のワノ国編でもう一人仲間になれば人数は11人同士で揃う)
さて、ギリシャ神話の神々の王達と「イム、黒ひげ、ルフィ」とのリンクが成立する可能性が分かったところで話を本筋に戻そう。
ここまでリンクしているならば、冒頭に挙げたギリシャ神話の一文は、黒ひげの謎を解く上で見逃せないのだ。
黒ひげの「最終目的」とは
私が着目した一文は、壮大なギリシャ神話の一番初めに記されている。
ー 世界は”カオス(虚空)”だった ー
この場合のカオスとは、”光”も”形”も何も無い空間を表している。言わば「闇」だ。
(しばしば”混沌”と訳されているが、物体同士がグチャグチャになっている状態と混同されやすいので、何も無い空間という意味の”虚空”という訳を採用している。)
ギリシャ神話ではこのカオスこそが全ての始まりなのだが、黒ひげの最終目的がヤミヤミの実でなければ実現不可能であることを繋げると答えが見えてくる。黒ひげは、ギリシャ神話とは真逆にこう考えているのではないだろうか…
ー 全てを破壊し尽くした後、青色の星をのみ込み”カオス(無)”に還す ー
私は、これこそが「黒ひげの最終目的」だと考えている。そして、これを可能にする為に必要だったのが「全てを破壊し尽くす”グラグラの力”」であり「破壊したモノ全てをのみ込み尽くす”ヤミヤミの力”」なのではないだろうか。
本人もこう述べている。
では、本当にその様なことを考えているのか前述した「黒ひげ海賊団の性格や特徴」と照らし合わせてみよう。
・周到な計画がある
・海賊王になるつもり
・支配者になりたい訳ではない
・死を恐れない最初の5人
・死ぬ運命にあった後の5人
・最終目的はヤミヤミの実だからこそ実現可能
まず、ヤミヤミの実が転がり込んでくる可能性が高いという理由で白ひげの船に乗ったところから既に「周到な計画」は始まっていたと言える。他のどの実を食べても世界をカオスに還すことは叶わないからこそ、仲間を殺してでも手に入れたかったのだろう。
また、最終的には青色の星のモノもヒトも森羅万象がカオスに還るのだから「支配者になる必要もない」。
更に、森羅万象をのみ込むということは味方ごとのみ込むことになるが、「死を恐れない最初の5人」は、いずれにしても最終的には自分達ものみ込まれる計画だからいつ死んでも構わないし、死を恐れる必要もないのだろう。彼らがとにかくやりたい事は恐らく…
ー “破壊”と”殺戮” ー
それは「死ぬ運命にあった後の5人」も同じで、脱獄出来たからといって今さら世界を支配しようなどと小さなことは考えておらず、命の限り破壊と殺戮をし尽くしたいと願う「サイコパス集団」なのではないだろうか。
シリュウのこの言葉の真意は、「監獄にいても死ぬ運命だったのだから、お前と一緒に全てを破壊し尽くしてから死ねるなら本望」ということではないだろうか。
一方、「海賊王になるつもり」は、カオスに還すことにどう絡むのかが難しいところだが、黒ひげの場合”海賊王”という称号だけを求めているとも思えず、やはりここにも何か”明確な目的”があると考えられる。
その目的とは、海賊王になること(=ラフテルに到達すること)で付随して得られる”何か”を手に入れることではないだろうか。それは例えば「富、名声、力」のうちの「力」なのかもしれない。
黒ひげは、歴史研究が趣味で「ひとつなぎの大秘宝もそうさ!!必ず存在する!!!!」と発言していることから、ある程度ラフテルに何があるか検討がついていると取れるので、その「何らかの力」は世界をカオスに還す目的をも叶えられるモノなのかもしれない。
つまり、黒ひげの言う「海賊王にはおれがなる」とはイコール「”何らかの力”はおれが手に入れる」ということだと思うのだ。
以上のことから上に挙げた「黒ひげ海賊団の性格や特徴」と「世界をのみ込みカオスに還す」という答えの整合性は、ある程度取れているのではないだろうか。
続いては、黒ひげが「自由」をキーワードとしているであろう「Dの一族」でありながら、ここまで述べた最終目的も含めどこか”異質”に感じられる謎にも触れていこう。
実は、黒ひげもある意味では世界を「自由」へ導いている…?
黒ひげが導く「自由」
Dの一族は、ルフィを始め一様に「自由」という言葉を使ったり、それを求めている趣旨の言動が多くみられる。
では、同じ一族でありながらルフィと明らかに意図して対比的に描かれている黒ひげは、思想も「自由的思想」とは逆の「支配的思想」を持っているのか?
それは「NO」だと思っている。
「支配的思想」を持つ代表者は、イムを始めとした天竜人達であり、その”神(天竜人)”に相対する思想を持つと言われるDの一族の黒ひげも「自由的思想」の持ち主だと私は考えている。
なぜなら、先に書いたように「支配者となろうとしている様子がない」というのと「自由奔放な言動」もそうだが、前述した最終目的も“ある意味では”世界を自由に導いていると考えられるからだ。
まずはコラソンのこちらの発言を見てほしい。
「お前達(Dの一族)の目的は…!!”この世界の破壊”なのかもしれない」
これはつまり、ルフィも黒ひげも「天竜人の支配する現在の世界を破壊する」という宿命を背負っているということだ。
同じ破壊でもルフィの場合は「破壊後に平和で自由な世界の”構築”を伴う破壊」であり、黒ひげの場合は「完全なる破壊をして”カオスに還す”」というところに違いがあるが、いずれの結果になっても「世界の破壊」というDの一族の宿命は果たしていると言える。
では、黒ひげの破壊は世界を自由に導いていると言えるのか?
「自由」という言葉は一度も口にしたことがない黒ひげだが、そのヒントは技名にある。
「”解放(リペレイション)”!!!」
世界を破壊し尽くしカオスに還すということは「天竜人の支配からの”解放”」に繋がる。無になった世界には支配も差別も偏見もないので、ある意味では世界を”解放という自由”へ導いていると言えるのだ。
インペルダウンでも囚人を”解放という自由”へ導いている。
ただし、黒ひげ本人は「世界を自由へ導きたい」とは思っていないだろう。
なぜなら、少年期の描写から何か壮絶な過去を抱えていると推察でき、その復讐を果たす為の「全ての破壊」だと考えられるからだ。つまり、本人の意思は別に結果として”解放という自由”へと導くということである。
それはルフィも同じで、ルフィの口から「世界をどうこうしたい」といった趣旨の発言は一度もないことから「夢の果て」を叶えた先に結果として世界を自由や平和へ導くと思うのだ。
最後に
ルフィが黒ひげと激突する動機を「エースの仇打ち」と考える人もいるかもしれないが、その展開をしてしまうと魚人島編を通して伝えたかった「怒りや憎しみに取り込まれてはいけない」という重要なメッセージが薄れてしまう。
ではどのような動機でルフィは黒ひげと戦うことになるのか?
もしも、ルフィが黒ひげの最終目的を聞いたらこう言うだろう。
「世界が無くなったら肉が食えねェだろ!!そんなの嫌だ!!!」
これはルフィにとって最も戦うべき動機かもしれない。笑
いずれにしても同じ海賊王を目指している時点で立ちはだかる相手になるので、ルフィにとってはぶっ飛ばすべき男であり、その戦いに勝てば結果的にエースの仇打ちも果たされことになる。
ただし、ギリシャ神話の流れでクロノスが一度王になっていることを考えると、「先にラフテルに到達して海賊王になるのは黒ひげ」という展開もあるかもしれない。
この辺りの展開や黒ひげの最終目的が明かされるまであと僅かだと思うので、ワクワクしながら待つとしよう。
次回予告
後編は、今回紐解いた「黒ひげの最終目的」に別の切り口からも辿り着いてみようと思う。
鍵を握るキャラクターはこちら。
ホーディ・ジョーンズ
不人気の筆頭とも言えるこの男と黒ひげには、「10個の共通点」がある。
ONE PIECEではクロコダイルとドフラミンゴの様に共通点のあるキャラクターは、相反関係にあったり、上位互換となっていることが多い。つまり、ホーディには黒ひげの謎を解くヒントがあるのだ。それを次回は詳しく書いていこう。
それでは、また次回。
(追記)後編はこちら
コメント
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